JAPAN TIMES 2006.9.16付記事
国が干渉したと訴訟で主張
安倍氏と自民党歴史教科書採択で訴えられる
編集委員 ホンゴウ ジュン(訳 横田満男)
歴史修正主義者がつくった歴史教科書採択の過程で干渉し、教育基本法に違反したとして、13日民衆のグループが、内閣官房長官安倍晋三氏と自由民主党を、東京地方裁判所に提訴した。
同教科書は、20世紀初頭の日本の東アジア侵略など日本の軍国主義的な過去を免責するものとして、世論で批判されている。
原告は193人だが、教員、PTA会員、(同教科書を採択した)東京の杉並区の住民、それに韓国籍者54人である。
原告は精神的苦痛の慰謝料として総計386,000 円、または各個に2,000円の支払いを求めている。
原告は、安倍氏と自民党が2001年文部省に「新しい歴史教科書をつくる会」の国家主義の学者が編修した同教科書を是認するよう圧力をかけた、と主張している。原告はまた、安倍氏と自民党に、日本語と韓国語の新聞に謝罪文掲載を命じるよう求めている。
「行政権者は教育の内容に干渉できない、ということが教育基本法に述べられています」と、原告の一人ワタナベヨウコさんが、13日記者会見で語った。
安倍氏の事務所は、メディアからの問い合わせに当惑していると述べ、この件についてコメントを断わった。
同教科書は、「慰安婦」(多くが韓国人で、日本軍の性奴隷だった女性のこと)に触れず、また1937年の南京虐殺も軽い扱いになっている。
この教科書を発行した扶桑社によれば、日本の11,000校の中学校のうち、杉並区と栃木県大田原市を含む約40校の公立中学がこの歴史教科書を使用中だ。
杉並区と大田原市は同教科書を2005年8月に採択し、学校では4月に使用開始した。
「間違った情報があるこの教科書を杉並区が使い続けているので、私は子供たちの将来がとても心配です」と、杉並区に住む54歳の主婦丸浜江里子さんは報道陣に語った。 そして、「訴えは時間がかかる戦いのように見えかもしれませんが、私たちには訴え出る必要があったのだ、と私は思っています」と述べた。
同じ13日275人の人々が類似の訴えを、愛媛県松山地方裁判所に起こした。2月にも、8人の杉並区住民が、同教科書の採択取り消しを求めて提訴している。理由は、杉並区の教員が書いた同教科書を否認する報告書が改竄されるなど、不正があったということだ。 この訴訟は未決である。